東海道を歩いて東京~京都を歩いたお話
これはわたしが、東京~京都を結ぶ東海道(500km)を歩いて横断した時のレポートです。
合計20日以上かけた旅に出たきっかけは、とても些細なものでした。
東海道を歩くのに必要なもちものまとめ↓
はじまり・東京(日本橋)~神奈川(大磯)
2016年5月。
その年のGWは退屈なことに、火・水・木の3連休しかありませんでした。
せっかくのGW、旅行に行くには短いし、何か面白いことできないかなーー
考えてみた結果、東海道を歩いてみることに。
目的地は、100km先の箱根にしました。
人間の歩行時速は4kmで、1日8時間歩けば32km。頑張れば3日で到着する計算になります。
そんなにうまく行くかなと思ったが、とりあえずやってみることにしました。
・1日目 日本橋~横浜
道のりはこちら
https://goo.gl/maps/fUEzPUBMFsR2
10:30
日本橋を出発。今日の目的地は横浜駅。(30km)
銀座・新橋など、そこそこ馴染みのある道を通ります。
歩き始めて1時間でトラブル発生し、靴ずれが痛くなってしまいました。
たまたまゴルフ用品店があったので、五本指ソックスを購入。
ソックスを履き替えると、すぐに痛みは収まりました。
店員さんに
「今日、歩いて横浜まで行くんですよ」
と話すと、
「本当ですか!頑張ってくださいね!」
と応援してもらえました。
2時間後、品川に到着。
日本橋からの距離は8kmで、ぴったり時速4kmで歩いてきたことになります。
多摩川を渡ると、「神奈川県 川崎」の標識を発見。
遠くまで来たという実感があり、嬉しくなりました。
というか「東京から数時間歩けば神奈川まで行ける」という事実は、自分にとってなかなか衝撃でした。
川崎に着くと、崎陽軒の前を歩いたり、1泊2,000円の民泊を見かけたり、
ホームレスがいっぱいいる通りに入り込んでしまったりと、知らない町に迷い込んだ気分を満喫。
足に豆ができかけていたので、ドラッグストアでバンドエイドを購入。この3日間で12枚は使いました。
日本橋を出て4時間以上。疲労はかなりのもので、つま先から腰まで、ギシギシと痛みます。
まるで下半身が、錆びた鉄の棒になってしまったようです。
特につま先はパンパンに腫れていて、痛さのあまり歩けなくなることもあったほど。
そういう時は、ベンチだろうがガードレールだろうが花壇の脇だろうが、とにかく腰を下ろして休憩しました。
町中に設置してあるベンチが、こんなにもありがたい存在だとは思いませんでした。
17:00
疲れが限界なので、通りがかりの銭湯に入って休憩。
隣にいた白髪の男性に、なぜかしきりに話しかけられました。
「今日は連休なのに、人が少ないからいいぜぇ」
「それにしても熊本は大変だったね(※熊本地震のこと)。お前さんの出身はどっちだぃ?」
お風呂につかると、熱いお湯ががこわばった筋肉をほぐしてくれました。
でも、ずっしりした疲労感までは取れません。
そこから先は、自分の限界との戦いでした。
もう立っているのもやっとの状態で、一歩前に進むだけで、骨まで痛みます。
日没後の国道沿いを一人で歩くのは、とても心細い気持ちでした。
20:00
横浜に到着。「横浜国際ホテル」というホテルに宿泊しました。
(高級そうな名前だけど、値段はリーズナブル)
もう初日からボロボロです。太ももの筋肉がカチカチで、まるで鉄パイプでも埋め込んだような状態。
ベッドに倒れ込むと、そのまま動けなくなって就寝。
窓の外には繁華街が広がり、酔っぱらいの騒ぎ声が聞こえてきます。
ある時など「舐めんじゃねぇよ!」という女性の声と、ガラス瓶の割れる音が聞こえて怖かったです。
・2日目 「横浜~茅ヶ崎市」
道のりはこちら
https://goo.gl/maps/ujnUnqCfydy
11:00
疲れが全く取れないので、チェックアウトギリギリまで休憩しました。
今日の目標は、24km先の茅ヶ崎市。
横浜のどことなくオシャレな住宅街をてくてく歩きます。
駅伝の難所として有名な「権太坂」を登ります。
急な坂道が続き、歩きでも大変でした。
15:00
中間地点の戸塚に到着。足の痛みは限界の限界でした。
「もう痛くて歩けない!」→「ちょっと休憩して、また出発」
を何度も繰り返してきて、それでも歩くのが辛い。
茅ヶ崎まではあと15km。もう限界だと思っている状態で、あと4~5時間は歩かなければなりません。
この時、
「もうアホくさい、やってられない!」
という鬱憤が爆発しました。
なんだよこの旅は、何にも楽しいことなんかないし、疲れるだけだし、終わりも見えないし、
やめることもできない。旅に出ることで充実した休日を過ごせるかなと思ったけど、大間違いだ。
そもそも日常生活はパッとしないし、あれこれチャレンジしても、結局やりたいことが見つからないし、
なんなんだよ俺の人生は……
怒りは変な所まで波及して、自分に八つ当たりすることになってしまいました。
気分転換にフェイスブックを見たら、友達が楽しそうな笑顔で、楽しそうな場所で、
楽しそうなことしている投稿が載っていて、ものすごく惨めな気持ちに。
18:00
どんなに駄々こねても歩くしかないので、歩きました。
藤沢に着いたのは、日が暮れかけた頃のこと。遠くに富士山が見えました。
空には飛行機雲が飛んでいました。
その軌跡はまるで、流れ星が落ちているかのよう。
景色に見とれたいところだけど、内心では焦っていました。
その時の自分は道に迷ってしまい、周りに宿泊施設が見つからない状態だったのです。
19:00
地図代わりのスマホのバッテリーが切れました。
道はわからないし、日は沈んでしまったし、もう歩く気力もない。完全に途方に暮れた状態でした。
とりあえず国道沿いを歩いていると、交番を発見。
近くにホテルはないか聞いてみると、1km先の「辻堂駅」という場所に「第一イン湘南」
というホテルがあるとのこと。最後の力を振り絞ってそこまで歩きました。
左足の筋肉が固まってしまって動かなくなったので、びっこを引いて歩行。
ホテルには20時に到着しました。
フロントでチェックインをするも、シングルの空きがないということで、1万円のダブルに泊まりました。
スマホを充電してホテルの予約サイトを見ると、ちゃんとシングルも空いていた模様……
まぁいいや、寝床が見つかったできただけでよしとしましょう。
ホテルの壁は薄くて、隣の部屋のカップルの声が丸聞こえで気まずい感じ。
深夜、彼らが「睦事」している声も全部聞こえてしまい、ますます気まずいです。
・3日目 茅ヶ崎市~大磯駅
道のりはこちら
https://goo.gl/maps/DUa4eJX4V9D2
この2日間で歩いた距離は53km。
これでは100km先の箱根まではとても行けません。
仕方がないので、小田原の手前にある「大磯」駅までを目指すことにしました。
11:00
ホテルを出て地図を確認すると、海が近くにあることがわかりました。
本来東海道は海沿いを歩かないけど、そんなこともうどうでも良い、とにかく海が見たい。
12:00
坂を登ると、海に出ました。
「自分は3日かけて海を見に来たんだ」と思うと、嬉しくなって、今までのストレスや疲れも、全部吹っ飛んでしまいました。
旅というものは、旅行と違って楽しくない時もあるけど、大きな達成感を味わえるのが良いな。
左手に江ノ島が見えるビーチで、しばらく休憩。
砂浜はアスファルトと違ってふかふかです。足に優しい。
13:00
茅ヶ崎サザンビーチに到着。湘南祭が開催されており、ビーチは大盛況でした。
14:30
ゴールの大磯まであと4kmほど。最後の栄養補給に、デニーズで昼食。
なんのへんてつもないハンバーグが、涙が出るほどおいしく感じられました。
16:00
大磯駅に到着。3日間の地獄の苦しみが終わったと思うと、叫びたくなるほどの嬉しかったです。
電車に乗ると、家に帰宅。路線はもちろん「東海道線」。
この3日間、ずっと自分の足で移動してきたので、電車に乗っていると
「なんて便利なんだろう、座っているだけで移動できるなんて!」
と、古代人のような気分を味わえました。
電車はたったの2時間で東京に到着し、
「この俺の苦労はなんだったんだ」
と思うほどのあっけなさ。
こうして、思いつきで始まった「歩いて箱根まで行こう旅」は、大磯駅で終わったのでした。
3日間の道のり
https://goo.gl/maps/WjKT76pLwrC2
旅が終わったあと、不思議な体験を2つしました。
1つは、日本橋~大磯間を歩いた景色が、ぼんやりとだけどすべて思い出せたこと。
2つめは、足がメチャクチャ綺麗になったこと。
汗をかいて老廃物が排出されたのか、ガサガサそた足が、つるつるすべすべの赤ちゃん肌になったのです。
旅の後は3日ほど、全身が重りを背負っているような、だるい疲労感に包まれました。
この時自分は「もう二度と徒歩旅なんてしないぞ」と心に誓いました。
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