北海道・電車で一周の旅

【北海道・電車で一周の旅】知床五湖ツアーで、知床の自然を満喫 ~10日目


世界遺産、知床へから

知床で自然ガイドツアーに出かけた日

朝7時。
NHKのニュースに知床が映っており、なんてタイムリーなのだろうと感動。

その番組では、知床では人里に姿を現すヒグマが増えて困っている、ということが報道されていました。

ヒグマの人里への出没率が上がった理由は、
餌付けされたヒグマが人間への警戒心を持たなくなってしまうからだそう。
そしてその心は、次世代にも受け継がれてしまうらしいのです。

午前8時半。知床五湖ツアーのガイドさんが車で迎えに来てくれました。
ガイドの人は小柄だけどタフそうな女性で、よく通る声をしています。

ツアーには初老の夫婦や30代カップルなど、合計で10人が集合。

知床五湖フィールドハウスという建物に到着すると、車内に荷物を置いて外に出ます。
今日も晴天で、自然遺産を歩くには絶好の日です。

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まず、ガイドさんがぼくたち参加者の入所手続きをしてくれます。
夏の知床の遊歩道は人の出入りが厳しく管理されているらしく、
受付をしてレクチャーを受けた人間でないと、中に入れないとのこと。

ガイドさんが手続きをしている間、わたしたちはビデオレクチャーを受講。
内容はヒグマに出会った時の対処法で、要約すると

・もしヒグマと遭遇してしまったら、ヒグマを興奮させないよう背を向けて逃げ出したり、叫んだりしない。
・逃げる場合は、ヒグマの目を見ながらゆっくりと後ずさること。(逃げ出したい相手をじっくり見つめるというのも難しい)
・もしヒグマに襲われたら、うつぶせに寝転がって首をガードすること
・ヒグマに出会わないよう、音を立てながら歩いたり、クマ撃退グッズを持ち歩くこと
・ヒグマの住み家におじゃましているという、謙虚な気持ちを持つこと

ビデオが終わると、受付を済ませたガイドさんが入所許可証を受け取ります

わたしたちは知床五湖遊歩道の入り口に集合しました。

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これからヒグマの生息地に踏み込むと思うと、少し不安な気持ちもありました。
昨日ナイトツアーで見かけたような、巨大なヒグマと遭遇したらと思うと、気が気でありません。
ちなみにヒグマが出没した場合、ツアーは中止になり、元来た道を戻らなければならないとのこと。

遊歩道の入り口には、靴用のブラシが置かれていました。
これは、靴についた植物の種を落として、植物の外来種を持ち込まないため。ガイドさんはある茂みを指差すと、
「ほら、そこに外来種のアザミが咲いていますよ」
と言いました。

出発する前、ガイドさんは林に向かって手を叩くと「ホイホーイ!」と、大きな声を出しました。
これはヒグマたちに、人間がいることをアピールするため。

午前9時40分、知床五湖ツアーの開始。
一行は林の中を架けられた道を歩きました。
森は静かで涼しくて、ヒグマが住んでいることを考えなければ、とても気持ちのいい場所です。

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ツアーが出発してしばらくすると、ガイドさんはある木を指さします。その木の幹は、皮がボロボロにめくれていました。

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「これは、イチイの木です。冬の間、鹿が草のかわりに、この木の皮を食べたんですね」
木の皮は、3メートルほどの高さまで食べつくされていました。
鹿はどうやって上部の皮を食べたのだろうと考えていると、

「高い場所の皮がめくれているのは、冬は雪が積もっていて、足場が高くなっていたからです」
とガイドさん。
幹の皮を食べられた木は死んでしまうため、知床では鹿の食害に悩まされているそうです。

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歩道を歩いていると、1頭の牝鹿と遭遇。
鹿は身を低くして、一瞬だけ身構えます。

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こちらが近寄ってこないことがわかると、鹿はのんびりと食事を続けました。

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「知床の鹿って、結構人間に慣れていますね」
と言うと、ガイドさんは

「鹿が人間を見ても逃げないのは、『ここに人間がいるということは、そばにクマはいないな』
と考えるからだそうですよ」と、教えてくれました。

ふと、森のどこからか、カツツン、カツツンと、硬いものをつついたような音。その音は、一定の間隔をとりながら鳴っていました。
「これはキツツキですね」と、ガイドさんが説明。
「この音は、キツツキが縄張りを示す音です。エサを取るときの音は、もっと音の間隔が短いんですよ。木に穴を開ける必要がありますから」

続いてガイドさんはある木の前で立ち止まると、幹の上の方を指さします。
幹には鋭い爪痕が残っていました。

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「これは、ヒグマの爪痕です」と、ガイドさん。
「この爪痕は、木の下から上へと続いています。そして、この木は山ぶどうの木です。
以上のことから、この傷はヒグマがぶどうを食べるために木に登った痕だと考えられます」

ガイドさんの知識の深さに、参加者一行は思わず驚きの声をあげました。
爪痕を見ただけでクマの行動を推察できるなんて、まるで探偵のようです。

それにしても、実際にヒグマが残した痕跡を目の当たりにすると、少し背筋がぞっとしました。
ここには確かにヒグマがいるし、「クマは木に登れる」という噂は、本当だったようです。

出発してから30分ほどして、最初の湖である「五湖」が見えてきました。
知床五湖は名前の通り5つの湖があり、ツアーでは五湖から一湖へと順番に湖を回っていくのです。

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透き通った湖面には、青空や山の稜線がくっきりと映り込んでいました。

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続いて四湖に到着。

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今のところ、なんとかヒグマには遭遇しない状態。
前方からは他のツアー参加者たちの話し声が聞こえてくるし、後ろからは他のツアーガイドさんが
「ホイホーイ!」という声を出したのが聞こえるし、ここまで人気があればヒグマも顔を出しにくいでしょう。

四湖から三湖に向かう途中、見た目は気持ち悪いが味はおいしいという「タモギタケ」というキノコや、
雨水をたたえてできた、名前もない池を発見。

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ほかにもガイドさんは、とあるエゾマツの葉を見せてくれた。
それはエゾマツの新芽で、先端の部分だけ鮮やかな緑色をしていました。
トゲトゲしいエゾマツの葉も、新芽はふにゃふにゃしたやわらかさ。

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回る湖はあと3つ。これから先、どんな生き物や植物と出会えるのか楽しみです。

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