電車で北海道を一周した話
これは2013年、当時は無職だったわたしが、北海道を電車で一周した時の話です。
東京を出発し、フェリーに乗って「苫小牧」へ。そこから東回りで
「帯広」「釧路」「根室」「知床」「旭川」「稚内」「札幌」「函館」と、主要なエリアを回っていきました。(小樽だけ行きそびれた……)
自然豊かで、どこまでも広大な北海道の空気を、少しでも感じてもらえたら幸いです。
2013年 6月13日
午後5時。
東京の家を出たわたしは電車を乗り継ぎ、茨城の大洗ターミナルに降り立ちました。
フェリーターミナルの受付で、乗船手続きをすると、待合所のソファでリラックス。
待合室にあるテレビからは「船内で暴力沙汰を起こさない」「船員にセクハラなどをしない」といった案内が放送されていて、これから乗るフェリーは物騒なところなのだろうかと不安になります。
午後5時半。乗船開始のアナウンスが流れたので、タラップを渡って船に乗り込みます。
船の名前は「さんふらわあ号」。
午後6時半に大洗港を出港し、明日の午後1時半、苫小牧港に到着する予定です。
わたしはカジュアルルームという、ベッドが備え付けられただけのシンプルな寝台部屋を予約していました。
値段は、下から二番目に安い1万円。
一番安いエコノミールームは、何十人もの乗客たちが大部屋に集まって眠るというタコ部屋。
神経質なわたしにはとても利用できそうにありません。
午後6時半。さんふらわあ号は大洗港を出航。
出航してから5分ほどたつと、船の揺れを感じるように。揺れは結構大きくて、なんだかゆりかごに乗ったまま空を飛んでいるような気分。少しだけ酔いそうです。
船内は静かで、ゴウゴウという空調の音と、ブーンというエンジンのうなり声の他には、なにも聞こえません。
暗くて狭い部屋に1人で寝転んでいると、まるでコンテナで郵送される貨物のような気持ちに。
午後6時半、レストランで食券を購入。食券は今日の夕食と、明日の朝食のセットで2,300円でした。
レストランはバイキング式で、船が揺れる中、ふらふらとよろめきながら料理を取っていきます。
その時食べた「鮭クリームコロッケ」が絶品で、鮭のまろやかな味が、とてもおいしかったことを覚えています。
食後。お茶サーバーのボタンを押すと、小さな湯呑みに熱いお茶がなみなみと注がれました。
揺れる船でたっぷりとお茶を入れられるのは、ちょっとした嫌がらせでは……。
レストランには色々な人たちがいました。裕福そうな老夫婦。わたしのような、暇そうな若者たち。家族連れ。サラリーマン。バイカー。
レストランを出ると、近くにあるドアからデッキに出てみます。
太平洋をかき分けながら進むフェリーは、とても頼もしく感じました。
船のへりに立つと、海面をのぞき込んでみました。
どす黒い水が波立っていて、まるで人喰い沼のよう。もしも船から落ちてしまったらと思うと、寒気がしました。
船上という、「外に出られるのに密室にいるような息苦しい感覚」は、どことなくミステリアスでワクワクしました。変な話、今にも殺人事件が起きそうな雰囲気です。
部屋に戻る途中、ソファやテレビが置かれた談話スペースの前を通りかかりました。
テレビでは野球のナイターがやっていました。マウンドをしっかりと踏みしめてボールを投げるピッチャーを見ていると、不思議と地面が恋しく感じます。
部屋に戻る前にトイレへ。揺れる船で、まっすぐ立って用を足すのは、なかなか技術のいることでした。
トイレの入り口には、安っぽい居酒屋にあるような、嘔吐用の便器?もありました。
午後9時半。着替えとタオルを持って浴場へ。
お風呂は町の銭湯と同じくらいの広さ。浴槽のお湯は波が波立っていて、
湯船につかると、体が波に流されてしまいます。
午前1時。深夜になっても寝付けずロビーに行くと、本棚にあった漫画を読んで過ごしました。
自分について。旅に出た理由について
旅に出た当時、わたしは26歳の無職でした。
その頃、漫画『銀の匙』を読んでおり、そのスローライフがあまりにも楽しそうで、
「北海道で乗馬をしてみたい!」
と、なけなしの全財産を持って旅に出ることにしました。
北海道を一周するにあたって、わたしは旅のルールを決めておきました。大体次のような内容です。
旅のルールについて
- お金はケチケチせずに使うこと
- やりたいことがあったら、ためらわずやってみること
- 北海道の自然を、たっぷりと楽しむこと。特に、美しい景色を見ること
- 乗馬を体験すること(これは『銀の匙』で、主人公が乗馬部に所属していたから)
- 体調を壊さないよう、ご飯は3食必ず食べること
- 疲れたら無理せずにゆっくり休むこと
北海道一周・旅の荷物について
・登山用のリュック(容量30リットル)
・雨具
・携帯メモ「ポメラ」(旅日記をつけるため)
・薬類(胃薬、風邪薬、頭痛薬)
・スマホ
・ヒゲ剃りや爪切り
・デジカメ
・北海道の地図
・着替え3日分(夏物から冬物まで)
・ポケット時刻表
・文庫本
・携帯音楽プレイヤー
このうち、時刻表と文庫本は、初日から無用な存在になってしまいました。
まず、時刻表。これはスマホで代用できました。
次に文庫本。旅の間はずっと気分が高揚していたため、落ち着いて本を読むことなど、とてもできなかったのです。
これらの不要品は、最後までリュックの中に居座り続けました。
午前4時。あれこれと考え事をするのに疲れたため、意識を失うようにして眠りにつきました。
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